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2017年12月24日

ナイトビジョン選び

ナイトビジョン選び


今日は画像少な目で、たまにはブログのタイトルらしいことも書こう。
ナイトビジョンについての話だ。
最近はアレがアレしてアレがアレなため、14や7ならともかくめぼしいブツが入ってきていない。
(何より一番の原因は通貨安による海外製品購買力の低下だと思うので、円安を怨もう)
よって、近頃は中古や隠し玉の新品がごく少数取引されるのみ。
大枚を用意しつつ、最も重要なのは機会ということになる。
玉数が少なすぎるために、売ってるときに押さえないと買えなくなってきている。

さてそんなNV選びの最も難しいところは、やはり暗視管の問題だ。
米軍における暗視装置の要求仕様としてomnibus(omni)という用語がある。
仕様は数年ごとメーカーとの契約の際に更新され、基本的に新しい年式ほどハローが小さくなり、感度が上がり、ノイズが減り、解像度も若干(劇的ではない)向上しつつあり、現在omni8まで更新された。
2017年末現在、ヤフオクでの直近のpvs14 omni7の相場が33~38万くらい。一方omni8には45万円以上の値が付いてるのだが、つまりこういうことだろうか?

「管の性能は民生管より軍用管の方が良くってオムニバスナンバーの数に比例して高性能になるし今はomni8が最高の管」
ナイトビジョン選び


ナイトビジョン選び
素晴らしい。すべて間違っている。


覚えておかなければならないのは、コントラクト毎のスペックは同列のomniナンバーで製造された性能の「最低ライン」を表すものであり、全ての個体は固有の異なるスペックを持っているということだ。
要するに増幅管という製品は個体差が大きいので、高性能な管が欲しければomniナンバーが新しいものを買っていれば良いという考え方は間違っているということだ。
最低ライン以上のスペックは個体差によって大きく変動するので、omniナンバーだけを指標に考えるより、基本的には現物を確認して買うのがベストだ。
(とはいえ通販などで現物が確認できないときには、omniナンバーの違いくらいしか指標になるものがないと言うのも事実ではある)

軍用管と民生管の違いは、契約に沿って軍に納入されている個体か否かというだけの話で、性能とは切り離して考えるべき点だ。
厳密には米軍が定めた(ISO規格を満たす)工場で増幅管や外装部品が製造され、組み立てられていれば、その暗視装置システムはミルスペックということになり、すなわち機種名に「AN/」が付くが、正直な処これはお役所仕事の産物で、性能とはあまり関係がない。
軍用管は規格に沿っていれば納入されるのに対して、民生に出回るものは予め検品されグレード分けされていることがある。
FOM1200程度のものから2000を超えるものまで色々あるので、性能についていえば軍用か民生かという定義にはあまり意味がない。

また、さっきomni7や8の相場について触れたが、omniナンバーの性能認識についての誤謬もよく見られる。
要求仕様をよくよく見ると、omni7までは全てのスペックが前回のコントラクトよりも向上しているのに対して、omni8ではほぼすべての主要スペックがomni7よりも低下している。
具体的には、最も重要なSN比と光電面感度がomni6レベルに低下し、ハローサイズ(小ささ)はomni5以上omni6未満となっている。

ナイトビジョン選び

これは暗視管の製造技術が頭打ちになって、omni7レベルの安定供給を続けることが難しくなってきていることを意味する。
コントラクトナンバーだけを頼りに入札しているとしたら、7が30万半ば、8が40半ばという相場はナンセンス極まりない。
皆よく調べて入札しよう
中古だと経年による劣化(ゲイン低下)を若干考慮に入れる場合があるが、第三世代の寿命(当初のゲインから明るさが半減するまでの時間)は1万時間以上あり、事実上無視していい。
(もちろん、個体差が重要なので7より性能のいい8も存在するわけだが、そのためには個体を直接比較する必要がある)

実用重視なのか、スペック重視なのかで、選び方を変えるのは大事なことである。
omni3、5、6、7と所有してきた個人的な意見では、確かに3と7ではいくらか性能に隔たりがあるし、室内や森林などの暗所では違いが出てくると思う。
が、実用上は、「夜戦に使うだけならば第3世代ならどれでもいい。」というところだ
確かに個体差によって明るい管、暗い管、ノイジーな管、解像度が並み以上の管、といろいろある。
なかには7管を凌ぐ下剋上なomni4も目にした。
が、ことサバゲで数十メートルの範囲で人を見つけて撃つだけなら正直どれでも問題ないと断言しておく。
オムニの違いで取れるヒットの数に違いが出ることはまずない。(ただし故障によりゲインが極端に低下した個体は除く)
また管に個体差があるとき、カメラなどの機械で撮影するとそれが感覚以上に大きく表れるものだが、それは人間の目を通すと脳で補正されるからだ
一方、コレクションとして誰よりも綺麗な管が欲しいという人はomni7-8管(の中のアタリ管)を探すのが近道だろう。

管の銘柄と同じかそれ以上に暗視装置の形式、運用方法もよく考えて選ぶのがいい。
ゲーム、コスプレ、コレクション、とりあえず覗いてみたいだけ等、どんな用途をメインに据えているのかで、選び方が変わる。
下に列挙するのは現代の第三世代暗視装置の代表的な方式、すなわちPVS7のような疑似双眼方式、PVS14のような単眼方式、PVS15のような双眼方式、PVS17のようなウェポンマウント式である。

ナイトビジョン選び
PVS7はお手軽かつ値ごろで比較的手に入りやすい。両目で見るので目が疲れにくい一方、コンパクトさに欠け立体感が無く、人によっては酔ってしまう。ゲームでも普段使い(?)でも十分に実用的だがコスプレアイテムとしてはいささか旧式感もある。
とりあえず覗いてみたいという人はこれがベストだろう。

ナイトビジョン選び
PVS14のようなタイプは、軽くコンパクトでハンドヘルドにもヘッドマウントにもウェポンマウントにも対応できる凄まじい汎用性が取り柄。
ウェポンマウントすれば銃のアクセサリーとしてもカッコいい。
一方やはり立体感はなく、ウェポンマウントは動的に動く必要のあるゲームでは実戦的とは言い難い。
立体視とトレードオフの重要な利点として、片目を夜目に慣らしておくことができる点も追記する。
片目がナイトビジョンに覆われていないということは、咄嗟に明るい空間に出た時や狭い空間内でフラッシュライトを使った探索を行うときなどにNVを跳ね上げる必要がない。
そのため、単眼タイプは効き目の反対側に持ってくるのが本来教科書通りの運用だ。


ナイトビジョン選び
二台買って来れば双眼タイプにもなるがこの場合重量が普通の双眼タイプ以上にかさむ

ナイトビジョン選び
PVS15等(画像は15じゃないが)の双眼タイプは端的に言って「とってもよく見える」ので最もCQBやゲームに向く。
3D眼鏡のような立体感があり、疲れにくく、個別の像を両目で見るため脳の補正により管のスペック以上の分解能を感じることができるためだ。
(視力検査で片目より両目で見た方がよく見えるのと同じ原理)。
立体感から車両の運転にも使われ、「とくしゅぶたい」のおじさんたちも主にこの種の機器を使っている。
一方、重量がいくらか重く、単純に14を二つ買うよりもたいていの場合高額になり、そもそもほとんど売ってない
だいたいは単眼や疑似双眼で満足できなくなった人間が踏み入れる沼の深いところである。

ナイトビジョン選び
ウェポンマウント式は、もはやロマンの世界である。
重く携帯するにはかさばる。たいていの場合倍率が付いているか解像度を高めるために視野は狭い。
常に周囲を警戒できるヘッドマウントと違って暗視するためには銃を構えねばならないし、フィールドを走査するためにはいちいち銃を振り回さなければいけない。移動中は別途ヘッドマウントNVがある場合を除き裸眼になるので索敵効率が落ちる。
ゲームでは同じ場所を定点監視する程度にしか使えず、銃のアクセサリーとして割り切るのが妥当だがそれ故に一番濃いのがこのジャンル
素人にはお勧めできない

ま、「ゲームだったらサーマルの方が強くね?」という無粋な異論は認めないでもないが、それはまた別のジャンルなので・・・



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Posted by 古屋  at 19:15 │Comments(2)夜眼鏡

COMMENT
素晴らしいお話でとても的を得ていたと思います。私もかなりの数を見て来ましたがomni数などに囚われずどんなチューブでも見て決めるのが良いと思いますけど色々考慮するとゲイン幅、解像度など安定してハズレが少ないのはomni7でしょうかね。
今まで見てきて素晴らしかったのはAAAのL3フィルムレスでした。
沼に飛び込むとANナンバリングチューブよりも民間系のスペックシート付き選別良チューブが欲しくなりますね。
Posted by 花が先か種が先か at 2017年12月25日 02:42
同じくomni7には良い印象があります。
個人的にはITTのomni7だと期待が高まりますね。

民間系と言えば昨今の入手難から、入手性の高いACT製なども考慮に入ってきますが、ハーダ―Gen3やフォトニス4Gといった欧州製Gen3の性能がどの程度なのか・・・気になります。
(流行のWP管もラインアップにあるので悩ましいところ)
Posted by 古屋古屋 at 2017年12月25日 11:49
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